2009年04月06日
「餃子の王将」餃子10人前大食い・必勝法その2
ジョッキに注がれた冷水を、アツアツの餃子に撒くベノワ。水餃子どころではない。水を含んで、オペラ歌手の中島啓江のようにブクブクに膨れた餃子を、一心不乱にパクつき始めた。
餃子の王将で餃子を食べた人ならわかるが、とてつもなく熱いのだ。なるほど、熱さに躊躇することなく、餃子を胃に放り込もうという作戦だ。4回生の時点で6回生までの関大生生活が決まったベノワ。このヒラメキと知恵を勉強に向けていれば、決して留年しなかっただろう。
ベノワに同行した女子マネージャーに取材する。「きょう一緒にボックスにいたんですけど、夜の8時ごろ、急に(10人前チャレンジ)やるって言い出して…」素晴らしい。まさにノーリーズン。若者の行動に、理由などいらない。さらに聞くと、失敗した時に払う2千円がなく、後輩から借りて大食い勝負に臨んでいるのだという。通学の電車代がなく、池田市から関大前まで自転車で通っている男はたくましい。
5分を経過する時点で、もう5人前(30個)を平らげていた。15分で10人前=60個、1個15秒がVペースだから、脅威のハイペースだ。ところが、6人前を食べ終わると、明らかに苦悶の表情を浮かべ始めた。
別の大食い経験者は「6人前の壁」があると語る。誰でも6人前までは平気で食べられるのだが、残り4人前を迎えて一気にペースダウンするという。腹が苦しくなるのもあるが、一番の難点は「飽きる」ことだという。
残り5分であと2人前。だが、時おり口を押さえては逆流物をこらえている。リバースすれば戦意喪失、TKO(not木本・木下)が宣告されるのだ。
「ミズ〜!」。王将内に響き渡る悲痛な声。ジョッキに水を入れてくれという、心から叫びだ。水で餃子を胃に流し込む危険な賭けに出たのだ。誰も逆らえない。この場面に出くわしていたら、エリカ様だって「別に」と言わず、水を注ぐに違いない。
残り1分で残り3個。微妙だ。その時だった。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
厨房内の店員も思わず振り返る。気合一閃、残りの餃子を箸でつかむと、一気に口に押し込む。コブシを握り、ミッフィーちゃんのような口になりながらも、胃からのリバース攻撃を耐え切った。
勝った−。店員が時計を確認する。残り24秒。「成功で〜す」との声が響き渡る。「ヨッシャーッ!」と叫ぶベノワ。亀田興毅のそのセリフよりも感動的で、説得力があった。
負けられなかった。以前、KWA勢で餃子チャレンジに挑戦し全員失敗。ひとりはジョッキ内に餃子をリバースし、合計1万2千円を払うという屈辱を味わった。ベノワは「最後はイキそうでした。6人前を越したくらいが一番辛かった。最後は学生レスラーの意地です。オレはレスラーとして自分に、王将に勝った」と語気を強める。単身向かったリベンジ戦でバカの壁、いや、6人前の壁を破った。
ワッショイ市山(21=経4)が「まさにWBC。ワールド・ベノワ・チャオズですね」と称える。制限時間内にクリアし、遅漏にならずにイチローになったベノワは「まず水をかけて餃子を冷ます。最初の5分で5人前を平らげるのが鉄則です。飲むと腹が膨れるので、水は最後の最後で流し込む時だけ。あとは意地です」と、必勝パターンを伝授する。餃子1日100万個のうち、15分で60個(約1・5キロ)を食べ切ったベノワ。関大魂は、万里を越える。
【ブームスポーツ編集局】